「……」
「もー知らない! 一人で撮るもん!」
一人で撮って楽しいものなのだろうか果たしてプリクラと言うものは。そして、一人で撮ると言いつつミキのシャツの裾を離さずにプリクラコーナーに移動しているのは気のせいではない。ミキが強く踏ん張れば、青子などに一ミリも動かされない自信があるが、そうできないのは、やはり惚れた弱味だろうか。
結局、ミキの固い決意ももろともせず、青子はプリクラ機の中にミキを誘導することに成功した。
「お金は私が出すからー」
当たり前だ。いや、そうじゃない、なぜ撮ることが決まっているんだ。
青子が、細い縦穴にコインを四枚含ませる。一枚入れるたびに、ちゃらりらん、と軽薄な音が響き渡る。ミキはもう諦めた。
「どの肌色にするか、選んでネ!」
「おすすめでいーかな?」
「知るか」
というか、肌色まで決められるのか?
「どの写りにするか、選んでネ!」
「ふんわりにする?」
「知るか」
なんだそれ、ふんわりってなんだそれ。ふんわりじゃなかったら何があるって言うんだ。ミキは、あまりの未知なる世界に困惑した。
そして、ぴぽん、と音がして、画面が切り替わる。青子のアップになって、慌てて青子が身を引いた。そして、もうどうにでもなれ、と思って眩すぎる照明から目を逸らしていたミキのほうを見て、画面を見て、青子が重大なことに気がついた。そう、ミキの身長では、彼の顔が入りきらないことに気がついたのだ。
「さん、にー、いち」
「うわっ」
パシャ、という音とともに、ミキは思いっきり下から引っ張られて体勢を崩した。撮った写真のプレビューが見れるらしい。若干目が大きくなったミキと、その制服を思い切り引っ張っている青子が写っている。
そのままなんだかんだと六枚ほど写真を撮られ、機械は言った。
「ピンクのらくがきコーナーに移動してネ!」
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