「ミキちゃんも書いてよ」
「いや、全然使い方分かんねぇんだよ……」
ミキは途方に暮れて、とりあえず黒いハートを押して写真にペンを走らせた。キラキラに縁取られた黒い線が、ペンを走らせただけ描かれる。……わけ分からん。
結局ミキが施したらくがきは、その黒い線だけだった。そして、メールアドレスを入力する画面に切り替わる。青子は手慣れた様子で自分のアドレスを入力していく。とりあえず、ミキも入力する。
「これ、メアド入れてどうすんだ」
「プリクラが、携帯に送られてくるんだよ」
「……プリクラってシールじゃねぇの?」
「うん、シールも出てくるよ」
怪訝そうな顔をしたミキに、青子が印刷が終わったシールを渡す。
「これ、もう半分にカットされてるから、ミキちゃんの分ね!」
「あ、おう」
「プリクラ、携帯の取り方分かんなかったら、私が取ったやつあげる」
というか、青子がこういったギャル文化の産物に精通しているのが、ミキにとっては驚きだ。写真なんて興味なさそうだし、プリクラを撮るイメージがない。
「お前、これよく撮んの」
「うん、お姉ちゃんと撮る」
「ああ……」
「あ、メール今送ったから、プリクラつきだからね!」
青子からのメールを開くと、頬を指で掻きながら困った顔で青子のほうを見ているミキと、笑顔でピースしている青子が写った鮮明な画像がついていた。……これを俺にどうしろと。
「待ち受けにしちゃおっと」
「ちょっと待て」
プリクラをとりあえず財布の札入れに入れながら、ミキは青子の暴走を止めたかったが、失敗に終わる。
かくして、明日から青子のクラスメイトたちに、恐怖だけでなくちょっと微笑ましさが混じった表情で見られることになるのだが、ミキはまだそれを知らない。
20120601
20160625
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