異国情緒と薄桃色の病
11

「大丈夫?」
「うっ、痛い……」
「だろうね」

 ひょこひょこと足を擦りながら、比奈ちゃんが俺のあとをついてくる。慣れない下駄で歩き回ったせいか、靴ずれを起こしたらしい。
 近くの公園のベンチに座らせて、半べその比奈ちゃんの足から下駄を抜き取り見ると、痛々しく腫れ上がって血が滲んでいる。
 あいにく絆創膏なんていいものは持っておらず、辺りにはコンビニも見当たらない。駅前にたしか一軒あったはずだと思い、比奈ちゃんに両腕を差し出した。

「ん?」
「抱っこしてあげるから。駅前まで歩けないでしょ?」
「うー」

 恐る恐る俺の腕を取り、比奈ちゃんがぺとっとくっついてくる。骨ばかりの痩せた身体は軽く、俺でも簡単に持ち上げることができた。
 がちがちに固まっている比奈ちゃんに苦笑しつつ、純粋な疑問がわく。

「なんで拓人に抱えられても平気なのに、俺はだめなの?」
「えっ、その、それは……」
「それは?」
「拓人さん、お兄ちゃんに似てるですよ」
「……あんなお兄さんがいるの?」
「んと、背とか違うし性格とか喋り方も違うんだけど、なんとなく、似てる、です」
「ふうん」

 なんだか悔しいが、お兄さんと一緒だと恋愛対象にならないだろうから、よしとするか。
 ……前に佳美さんが「そうかしら」と笑いながら呟いたことを思い出す。それは本当だった。
 自覚してしまえば、隠し切ることがとても難しいこの気持ちを、比奈ちゃんに全部ぶつけてしまいたい。そんな衝動に駆られてしまうのだ。
 駅前のコンビニで絆創膏を買って比奈ちゃんの足の指に貼る。相変わらずひょこひょこと歩いてはいるが、絆創膏のおかげでダメージはだいぶ軽減されたようだ。普通に電車に乗り、比奈ちゃんの住むマンションを目指す。
 普通に歩いていると、比奈ちゃんがふと足を止めた。痛いのかな、と振り返る。

「痛い?」
「……先輩は、やさしいですね」
「え?」

 突然何を言い出すんだろうと思って首を傾げる。俺は別に、優しくもなんともないのに。

「俺は別に」
「先輩は、比奈にいろんなこと見せてくれる。海とか、花火とか、金魚とか」
「……」

 それを優しさと呼ぶのなら、そう呼べばいいけれど。