異国情緒と薄桃色の病
07

「あれは、何?」
「林檎飴ですよ、林檎に水飴を……うわっ」
「おじさん、リンゴアメひとつ」
「へい、どうぞ!」
「Grazie!」

 先ほどから、拓人さんは気になる食べ物を端から食べていっている。林檎飴の前には綿飴を食べていたし、その前はたこ焼きを食べていた。ちなみに、たこ焼きは気に入ったが、綿飴は甘さが足りなかったらしい。
 林檎飴を前に、どうやって食べればいいのかを少し思案したあと、恐る恐るかじってみる。咀嚼していた頬が、少し緩んだ。気に入ったようだ。

「Giapponeのお菓子は、甘さが足りないものばかりだな」
「拓人さんの舌がおかしいんですよ。林檎飴なんか、あたしからしたらゲロ甘ですよ」
「そうなのか。でもこれはなかなか美味しい。……ゲロ甘ってなんだい?」

 水飴が歯にへばりつくのが不快なのか、口の中で舌が泳いでいる。
 はぐれないように繋いだ手は、何度か振り解こうと試みたものの、失敗に終わって放置している。さっきみたいにいきなり手を引っ張られて出店の前でつんのめるのを繰り返していてけっこう危ないのだが、とりあえず、先輩と比奈の距離が近づけばいいのだ。あたしも大概お節介な性格だ。
 別に先輩のためにやっているわけじゃない。八割方比奈のためだ。自分で気付いているのかは分からないけれど、あまりに態度が露骨すぎる。拓人さんだってあたしが突然腕を引っ張ってふたりから離れたのを聞き咎めたりしなかった。それはつまり、理由が分かっているから。

「こういう場所で手をつないで歩くというのは、とても風情があるな」

 ……だと思いたい。