出会い誤解そして和解
04
学校の廊下は好きじゃない。別に、それらしい理由はないけど。
一年生の教室を一つずつ確認して回っていると、俺に気付いた一年の女の子たちが寄ってきた。
「先輩、どうしたんですか?」
「今日は私と遊んでくれるんですか?」
「アハハ、ちょっと人探し」
「誰?」
「ひなちゃん、て分かる?」
「……? 誰だろう?」
そりゃあな、一年生で、まだ季節は梅雨に入ったばかりで、ほかのクラスの女の子の名前だけを頼りに特定するのは無理だ。
女の子たちを引き連れながら、一年三組の教室の開いていたドアからひょいと覗き込むと、一番窓際の一番前の席でせっせこ荷物をまとめているひなちゃんを見つけた。
「ひなちゃん」
「ん?」
ぴくっとひなちゃんが動きを止めてこちらを見た。
「お昼はどうも」
「……」
「梨乃ちゃんは?」
近寄れば、顔面蒼白で夏だというのに鳥肌を立てている。実に分かりやすく嫌われているな、俺。
苦笑してひなちゃんの顔を覗き込むが、目が合わない。お昼も思ったけど、少女、という言葉がぴったりの、ほんとうに小さな女の子だ。身長は目算で百五十センチもないかもしれないし、半袖のシャツから伸びる腕は馬鹿みたいに細い。
「ねえ先輩、今日は暇なんですか? 遊びましょうよ」
「この間、あたしと遊んでくれるって言いました!」
背後で、俺についてきた女の子たちが小競り合いを始めた。皆勘違いしているようだが、俺はこれでもけっこう忙しい身だ。
「ねえ、こっち向いてよ」
無言で激しく首を振り頑なに目を合わせようとしない。ひょい、とこちらが首を傾げれば、それとは逆にひょいっと首をそらすのが、しばらく続く。なんだかそういう種類のおもちゃのようだ……。
あいざわさんよりあたしと遊んで、と後ろから声をかけられるけれど、わざと聞こえないふりをする。相手をしたが最後、二度とこの席には戻ってこれないだろう。そうか、ひなちゃんはあいざわさんと言うのか。
……しかし、なんとまあ、面白いくらい顔色が真っ白だ。