海に恋して君に恋して
06

 比奈ちゃんと梨乃ちゃんが席に着き、先輩もはやく、と促されてとりあえず空いていた比奈ちゃんの横に腰掛ける。なんだかじとっとした視線を感じたが、もうここはいちいち構っているときりがない。

「いただきまーす」

 おかずとして出されたのは、中にいろんな野菜が入ったカラフルな玉子焼き。適度に塩味が効いていて美味しい。

「あれ? 先輩もう終わり?」
「うん。おなかいっぱい」

 素麺も飲み込むように食べて箸を置くと、梨乃ちゃんが驚いて手を止める。彼女たち女の子は食べるのが遅いので、未だ口をもごもごと動かしつつも、素麺はあまり減っていない。ちらりと向かい側を見れば、幼馴染二人はまだ食べていた。

「桐生君、もういいの? 遠慮しなくてもいいのよ?」
「あ、いえ。俺、少食なので」

 気取りやがって、とぼそりとどこからか聞こえたような気もするが、実際食が細いのだから仕方ないだろう。

「とりあえず、水着買わなきゃね」
「あ、そっかー。比奈学校のしか持ってない」
「……水着?」

 何気なく二人が交わした会話に反応した筋肉に、夏休みは俺や梨乃ちゃんといろんなところに遊びに行くのだと説明した比奈ちゃん。
 相沢家のリビングが、先日のお見舞いのように、いやそれ以上に修羅場と化したのは、言うまでもない。