心臓に誓って愛を食う
04

「これなんかどうかな?」
「比奈ね、靴はこれがいい」

 ブライダルショップで、俺たちの、と言うか主に比奈の衣装を決める。式場は、梨乃ちゃんたちが式を挙げたところと決めている。
 俺は、比奈にはフリルをふんだんに使った可愛いドレスを着てほしい。そして本人もそれを望んでいるようなので、ウェディングドレスはオーダーメイドにすることにした。俺はデザインとかはよく分からないから一切携わらず、拓人が協力してくれていた。
 披露宴での衣装直しに時間がかかっている。比奈に似合うピンクの可愛いドレスは決まったのだが、もう一着が決まらない。

「これは?」
「うーん、なんか、比奈のイメージじゃないな」
「じゃあ、こっち」
「微妙……」
「比奈は、これがいい」
「ピンクのと変わんないじゃん」
「むーっ」
「思い切って赤とかどう?」
「赤……」

 赤いドレスを試着した姿は、意外と似合っていて、俺はそれだと即決した。

「オーダーメイドのは、結婚式までのお楽しみですよ!」
「俺は見ちゃ駄目なの?」
「駄目!」
「ちぇっ」

 比奈の実家にウェディングドレスが届くようにお願いして、他にもいろんなことを決めて、ブライダルショップをあとにする。

「楽しみだね」
「あい!」

 比奈が卒業してからの結婚だから、あと一ヶ月以上ある。楽しみで楽しみで、仕事中もついにやけてしまう。
 ブログに結婚すると書いたら、ものすごい反響があった。記者には追っかけまわされるし、ニュースのネタにされるし、お祝いのファンレターがものすごい数届いた。

「笑うな」
「もうそろそろ笑顔解禁してもいいんじゃないですか?」

 幸せ気分で撮影に臨んでいると、カメラマンに注意され、俺はため息をついて呟く。ミステリアスなクールビューティだって笑うときもある。彼は少し考えて、それもそうだな、とぶつぶつと何か考えるように言った。
 インタビューも何件か受けた。あるバンドのPVにゲスト出演したので、音楽雑誌という俺とは縁のなさそうな雑誌の取材を、そのバンドのメンバーと一緒に受けたのだ。というのも、俺が前々から好きだったバンドだったので……こういうの職権濫用って言うんだろうな。
 すでに結婚報告を済ませていた俺は、そのことにも突っ込まれた。笑って俺の宝物ですと言えば、そこにいた全員に冷やかされてしまった。
 そしてそのインタビューの様子が、午前中の情報番組でちらっと流れてしまった。当然比奈の耳に俺のノロケが入っていく。