心臓に誓って愛を食う
03
梨乃が、お父さんに寄り添いながら、ゆっくりとヴァージンロードを進んでくる。さっきも思ったけど、やっぱりきれいだ。伏し目がちになっているのが、ますます美人度に拍車をかけている感じ。
「誓いますか?」
「誓います」
梨乃と拓人さんが、神父さんの前に立って、病める時も健やかなる時も……というセリフに誓いますと力強く答える。
そして、拓人さんが梨乃の、白い肘まである手袋を取って、指輪をはめる。そしてそしてヴェールを取って……きゃー!
「比奈?」
「はうはう……正視できないです……」
「キスくらいで大げさだなあ」
「だってー」
両手で目を覆って、指の隙間からふたりのキスシーンをちらりと見る。長いよ! もう終わりだよー!
ようやく唇を離したふたりは、にっこりと笑い合ってもう一度軽いキスを交わした。もう!
「庭に出るみたいだね」
「あいあいさー!」
庭に出て、新郎新婦を待ちかまえる。やがて腕を組んで出てきたふたりに、用意された花びらが降り注ぐ。今日は快晴、冬晴れだ。太陽のまぶしさに目を細くしながら、ふたりはにこにこと幸せそうに笑っている。
「それでは、ここで新婦によるブーケトスです」
梨乃の手には小振りのブーケがあって、観客に背を向けて、思いっきりブーケを投げた。
ぽかんと口を開けてそれを見ていると、ブーケがあたしの足元にすとんと落ちてきた。さっちゃんが、それを拾い上げて手渡してくれる。
「次は比奈の番ね」
梨乃がくすくすと笑う。ブーケをもてあそびながら、周囲の微笑ましげな視線に思わず俯くと、さっちゃんが笑ってあたしの頭を撫でた。
「当たりだね」
「むむ……」
顔が真っ赤になるのを抑えきれない。
周りの人たちの拍手に、あたしは俯きっぱなしで、でも笑っていた。
次はあたしだ。
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