こんにちはバンビーノ
05

「可愛い〜!」
「猿みたいだね」
「猿ではない、隼人だ」
「あ、名前もう決めてたんだっけ」

 あらためて、猿もとい隼人くんを見る。梨乃ちゃんの腕に抱かれた隼人くんは、すうすう眠っている。
 比奈は可愛い可愛いの連発で、ちょんちょんと頬を突いてみたりむにむにと引っ張ってみたりしている。

「あ、梨乃!」
「何?」
「どうして結婚したこと黙ってたの!?」
「あれ、言ってなかったっけ?」
「聞いてないよ! 比奈聞いてないよー!」
「あー、ごめん。結婚しました。柳梨乃になりました……」

 むくれている比奈の手前、俺は知っていたとはとても言えないな。

「それで、あと半年、家から大学通うんだっけ?」
「はい」
「俺も通うぞ」
「はいはい」

 拓人が優しい目で隼人くんを抱き上げる。すると、その閉じていた目が開いて、わんわん泣きはじめた。

「拓人さん、嫌われてるですよ」
「そんなことはないだろう」
「でも泣き止まないですよー」
「ほら、よしよし」
「ふにゃあああ」
「おかしいな……」

 比奈がプススー、と笑いをこらえている。それを見た梨乃ちゃんも大笑いしている。拓人は首のすわってない赤ん坊を必死にあやすが、泣き声はやまない。拓人も困ったように笑い出す。

「母親のほうがいいようだ」
「はい、よしよし」

 梨乃ちゃんの手に戻ってきた隼人くんは、ぴたりと泣き止んだ。拓人が頭を抱える。大笑いする女性陣。
 俺は、比奈の目がうらやましそうなのに、気づかないふりをした。