契り千切って元どおり
04

 さて。全快です。比奈の献身的な介護により、風邪なんかすっかりぶっとびました。
 いろんな雑誌(主に女性誌)のグラビア写真を撮るのが最近の仕事だ。写真集を出したばかりだから、宣伝が忙しいのだ。
 写真集の売り上げは好調である。本屋に行くと、新刊のコーナーに大きく取り上げられていた。ちょっと照れくさい。
 そして、もっと照れくさいことがある。

「きゃー、先輩かっこいいー!」
「全然笑わないんですね」

 比奈と梨乃ちゃんが、写真集を見ながら各々の感想を述べていく。それを聞いている俺はいたたまれない。で、いたたまれないので、キッチンに逃げてきたという話。
 紅茶を淹れながら、背後のダイニングテーブルから聞こえるきゃいきゃいした声にげんなりする。

「あれ? これ、比奈じゃない?」
「え? あっ、これ、ボツになったんじゃなかったの?」

 ん、何の話だ?
 淹れた紅茶とマグカップをダイニングテーブルに置き、ふたりを見る。
 すると、比奈があるページを見せて聞いてきた。

「これ、遊びで撮ったってカメラマンさんがゆってた……」
「ああ、意外とよく撮れてたから採用になったんだ」
「はっ恥ずかしい……」

 それは、白いレースの衣装でごてごてに飾った比奈を俺が背後から抱きしめている写真だった。比奈の顔は見えていないし、構図的にもいいし、ということで採用になったのだ。すっかり忘れていた。
 そういえば、インタビューでも聞かれたな。これは誰だ、って。内緒と言っておいたけど、きっと恋人だとばれているだろう。足立さんはそういうのに敏感だから。
 比奈はダイニングテーブルに突っ伏してもじもじしている。

「この写真、先輩が伏し目がちなのがいいですよね。愛情が伝わってくる感じ」
「そう?」

 そう言われると照れる。実際愛情を持って白装束の比奈を抱きしめたわけだし。
 頭を掻きながら写真を見る。羽がふわふわ舞って、天使を抱きしめているようだ。

「いいなあ、この写真」
「ありがと」

 まだもじもじしている比奈を横目に、梨乃ちゃんはどんどんページを進めていく。

「あ、これいい。これもいい」
「……」

 梨乃ちゃんは気づかない。チャイムが鳴ったことも、自分の旦那が部屋に入ってきたことも。真剣に写真集を批評している。あーあ、知らないぞ。

「この先輩かっこいい」

 ダンッ、と梨乃ちゃんのすぐ横に手が振り下ろされた。びくりと反応した彼女がこわごわと顔を上げる。

「そんなにヒサトが好きか? ン?」
「いや……まさか」
「浮気な奥さんにはお仕置きが必要かな?」
「激しいのは駄目ってお医者さんに言われたでしょ!」
「誰がセックスのことを言ったんだ、この変態」
「……!」

 梨乃ちゃんが、セックスのときだけ拓人は乱暴になると言っていたが、その片鱗を見た気がする。にやにやしながら梨乃ちゃんをいじめている拓人は、輝いている。

「ふわ!」

 あ、復活した。