淋しいとただ言い訳を
07

 いっけなぁい、と再びちまちまクリームをすくいはじめる。
 比奈ちゃんが完食したのを見届けて、皿を持って立ち上がる。それに遅れて比奈ちゃんも立った。俺はそんなに背が高いわけじゃないけど、比奈ちゃんが低すぎて、見下ろすとふたつのつむじがある頭頂部しか見えない。ひょこひょこ歩く比奈ちゃんの後ろ姿をじっと見ていると、視線を感じたのか振り返った。

「なんですか?」
「ううん、可愛いなって思っただけ」
「な!」

 ぽぽぽ、と頬を赤くして、挙動不審になる比奈ちゃんがますます可愛い。これはけっこう、久々に本気でキたかもしれない。
 手をうちわにして頬の熱を冷まそうとしているその片手を取って、スタバを出る。比奈ちゃんの歩幅に合わせるのは大変で、少し小走りでついて来る彼女が、無性に可愛くてしかたない。
 恋なんだろうか。まだ数度しか顔を合わせていないのに。
 一目惚れとかは、信じるほうだ。だから俺が比奈ちゃんを好きになるのも不思議な話でもない。時折振り向くと、早足になっている比奈ちゃんと目が合って、思わず微笑んでしまう。
 俺、好きなんだな、比奈ちゃんのこと。
 思ったらすぐ行動に移すのは、俺の長所でもあり短所でもある。

「ねえ、比奈ちゃん」
「う?」

 立ち止まった俺に、不思議そうに首をかしげた比奈ちゃんの首に、チェーンに通されてきらきら光るリングを見つけた。

「俺、比奈ちゃんのこと、好きだな」
「え?」
「だから、好きだから、付き合ってほしい」
「……でも、比奈は先輩が好きなの」

 ここでの先輩は俺じゃないことくらい分かる。それでも諦めずに食い下がる。

「もう別れたんだろ? 今フリーなんだろ?」
「う、それはそうだけど……」
「じゃあ、友達からでいいや。これからもこうやって遊んでくれる?」
「そ、それなら……いい、ですけど……」

 もごもごと、それでも了承の言葉が紡がれて、俺は密かにガッツポーズをした。
 これから徐々に落としていけばいい。幸い、大好きな元彼くんに似ているんだ。極論代わりでもいい。そのうち俺自身を好きになってもらえればいいんだから。