嘘に優しさなんかない
09

「ちょっとジュース入れてくる」

 コーヒーを飲み干して、ドリンクバーへ向かう。グラスを置いてコーラのボタンを押す。ちびちびと流れてくる茶色の液体を眺めながら、比奈のことを思い出す。比奈は炭酸が飲めないから、いつもオレンジジュースばかり飲んでいたっけ。
 ところで、このコーラと一緒に流れてくる水みたいな液体はなんなんだろう。往年の謎だ。
 席に戻ると、ちょうど拓人が頼んだピザがきたところだった。マルゲリータを頼んだらしい。早速一切れ口に運び、うんうんと頷いた。

「食べるか?」
「いや、俺は……」

 スパゲッティでもう腹いっぱいだ。太れ、と足立さんに言われたな、とぼんやり思う。そういえば、足立さんと長い間連絡を取っていないが、彼女は諦めたのだろうか。

「やっぱ一枚もらう」
「ああ、お前はもっと食べたほうがいい」
「……」

 無言でピザをかじる。満腹なためか、美味しいとも不味いとも感じない。ただのピザだ。
 むぐむぐとやけに柔らかい生地を平らげ、コーラを一気飲みする。ケフ、とげっぷをして、食べるスピードが衰えない拓人を眺める。この調子だとハンバーグまで注文しそうだ。
 という俺の懸念を裏切って、拓人は満足したのか今度はデザートを注文した。ティラミスだ。
 結果、拓人はサイゼリヤに満足したようで、これからもちょくちょく来ようなどと言っている。これからって、残り三ヶ月しかないじゃないか。