信じるなんて馬鹿だよ
09
「やっと貫通か」
「ロストバージンおめでとー」
「……ありがとう」
夏休み後半の補習一日目、窓の外から比奈を見たあゆむと純太が茶化すように言う。どうして分かったのかとは聞かない。昨日の今日だ、比奈はまだ下腹部の違和感が取れないようでいつにも増して動きが遅くなっている。というか、一緒に歩いていた梨乃ちゃんのからかう声が聞こえたのだ。(ようやくやったんだね〜)、(あわわわわわ)。
なんとなく気恥ずかしくて、机に顔を伏せる。
「今夜は赤飯炊いちゃおうかな」
「なんでお前が炊くんだよ」
「保護者的なノリ?」
「保護者は池田だけで十分だろ」
「たしかに」
じゃあ梨乃ちんに赤飯炊くよう言っとかないと、とのたまう純太に、それも違うだろうと思ったが、言い返す気力はなかった。
チャイムが鳴り古典の教師が教室に入ってくる。あゆむと純太は形だけでも勉強して卒業へのポイントをためるのだろう、各々の席に戻っていった。
眠気を誘う教師の口調に、顔を伏せていた俺はそのままうとうとと、補習の時間を寝て過ごしてしまい、最後のコマで沢山先生に、よりにもよって黒板消しで叩き起こされることになってしまった。
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