信じるなんて馬鹿だよ
08

 寝転んでしまうと比奈の胸はあってないような緩やかな線を描き、下腹がキューピーちゃんのようにぽっこりと出ている。胃下垂だからだろう。幼児体型とも言えるそれに誰ともなく言い訳をし、そのない胸を愛撫する。
 何度となく触れた胸、細い腰、棒のような太股、そしてその奥。今日だけはどうしてか、寸止めなんてできそうになかった。
 散々喘がせて、俺は自分の着ていたシャツを脱ぎ、ベルトを外してジッパーを下げた。ベッドの近くの棚に入れてあるゴムを取り出して装着し、とろとろに溶けているそこに先端を押し当てた。眠たそうな目で虚空を見ていた比奈の瞳が見開き、俺を見た。

「大丈夫だよ」
「先輩……」
「尚人って呼んでほしいな」
「ひさと?」
「怖くないから、大丈夫。ね」
「……うん」

 身をかがめて、比奈が俺の背中に腕を回してギッと爪を立てて唇を歯で噛む。軽くくちづけてそれをやめさせて、ゆっくりと押し込んだ。とたん、短い悲鳴とともに、背中に軽い痛みが走った。比奈が、立てていた爪を背中に食い込ませたのだ、無意識に。
 キスをしながらゆっくり進んでいくと、それに呼応するように爪が食い込んでいく。中ほどまで入った辺りで、じわじわ痛めつけるより一気に片をつけたほうがいいかと思って、ぐっと残りを押し込んだ。俺の唇は悲鳴を飲み込んで、食い込んでいた爪が一気に下がって強く引っかいた。

「……大丈夫?」
「く、るしい……ふ、は」
「痛くない?」
「ちょっと」

 汗で額に張り付いた髪の毛をすいて、そこにもキスを落とす。額、まぶた、鼻の頭、頬、唇、首筋。痛みを散らすようにごまかすように、そこらじゅうに触れた。
 しばらく動かずにいると、比奈の顔が少しリラックスしてきて、俺は軽く引き抜いた。

「きゃっ」
「あ、ごめん」

 なんの予告もなしに動かしたせいか、比奈が軽い悲鳴を上げた。頭を撫でて、動くよ、と告げると、驚いたように比奈が「まだ何かあるの?」と呟いた。まったく、知識が乏しいにもほどがある。
 比奈はずっと、尚人、ってその甘い声で俺の名前を呼んでいた。