憎しみと愛情は同じ色
13

「俺、あなたにずっと愛されたかった」

　声が震えた。彼は答えない。

「どうしてあなたの子どもじゃないんだろうって、何度も思った」

　小さくて事情も何も分からなかったあの頃、ただひたすらこの人に可愛がられたかった。父さんと呼んでまとわりつきたかった。それはしてはいけないことだと無意識のうちに悟っていた。自分が愛されない理由に気づいたとき墨をかぶったのも全部、この人に愛されたいからだった。最初は、自分が憎いからじゃなかった。ただ幼心に気に入られたいだけだったのだ。最初から、自分の存在を呪ってルカを恨んでいたわけじゃない。

「俺は、あなたの子どもになりたかっ……」
「もう、いい。尚人、今まで済まなかった」
「あなたが、謝ること、じゃな、」

　何かが解き放たれたような、真っ暗な闇に一筋光が差したような、矢で心臓を貫かれたような不思議な感覚がした。
　ああ、この人は、俺を嫌ってなんかいない。ただ、どう接していいか分からなかっただけなんだ。
　彼の俺に対する思いは今こんなにもはっきりと感じ取れる。それが嘘でもこの一瞬だけのまことでもかまわなかった。今、こんなにはっきりと感じている。それだけで十分だった。
　涙が静かに引いていくのを待って、呼吸を整える。

「……父さんのことを、父親だと思いたいんだ」
「だから……」
「俺の父親は生涯、何があっても父さんだけだよ」
「……」

　籍を抜いても書類上だけでも親子だった縁を切られても、大丈夫だ。俺が彼を愛しているから、大丈夫だ。
愛されたかった、ずっと。それは叶わないことだと自分を戒めた。でも、違ったんだ。最初から俺はちゃんと、愛されていた。――そう思っていいよね？

「……ありがとう」

◆