憎しみと愛情は同じ色
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「ふ、あ」
 頭がぼおっとする。先輩の指先に神経が集中して、顔がますます熱くなった。
 ソファの上で先輩の足の間に座って、されるがまま、先輩の指はどこへでも行く。頬にキスが落ちて、こぼれた涙をぺろりと舐められた。
 自分の太股に絡まったピンク色のパンツに目がとまる。恥ずかしい。制服を乱されてあられもない格好で先輩に好きにされている。

「……可愛い」
「あ、やだ、それやだぁ」

 はだけた胸元を見られたくなくてぎゅっとしがみつく。先輩の心臓の音が聞こえて、少し落ち着いた。
 なんて言ったらいいのか分からない、不思議な感覚が全身を覆う。なんだろうこれ、気持ち悪いけど、不快じゃない。なんだろう。頭の奥で何かが光るこの感覚。ああ、目がちかちかしてきた。涙でまともに前が見えない。
怖くなって先輩のシャツにしがみつくと、今度は額に唇が降ってきた。
 自分の心臓がばくばくとものすごい速さで脈を打つ。だめだ、死にそう。怖い。どうしよう、どうしよう……。

「あぁ、あふ、」

 耳元で先輩が何か囁いた。でも、何を言っているのかを理解することができなかった。脳が思考を拒否している。ぜいぜいと息を吐きながら、背中を撫でる先輩のてのひらの温かさだけをぼんやりと感じる。少し経つ頃には、全力疾走したあとのような息切れはおさまって、ものを考える余裕が少しずつ戻ってきた。
 最近、先輩にこうして触れられることが増えた。最初は太股や胸元を撫でるように手が滑るだけだったのが、だんだん際どいところまで這わされて、今ではこんなふうに自分でも触らないようなところに触れられて我を失ってしまう。
 上を見ると、先輩がぺろりと中指を舐めているところだった。優しい青い瞳と目が合って、どきりとする。どうしよう、恥ずかしい。目を逸らしたら笑われた。

「こういうこと、慣れてきた?」
「……ぜんぜん」
「そっか」

 苦笑した先輩が髪の毛を指でとかしてくれる。
 最初のうちは、これが……エッチってやつなのかと思っていたけど、最近どうやらそうではないらしいと気がついた。頭がおかしくなるくらい触られたあと、先輩は必ず曖昧に笑う。そういえば、先輩はあたしにいろいろするけど、あたしは先輩に何もしない。それってたぶん、おかしい。
 やっぱり、我慢、してくれているんだよね……先輩に我慢なんかしてほしくないと思っても、いったい何を我慢しているのかは実のところよく分からない。梨乃に聞いたら分かるのかもしれないけど、恥ずかしい。でも、聞かないと分からないままだ、きっと。

「……先輩は、何を我慢してるの?」
「え?」

 あたしのパンツを引き上げて足に通してくれる先輩に、呟くように聞いた。先輩は優しい表情からパッと難しそうな顔になって、うーん、と考えるような声を出して上を向いた。

「まあ、平たく言えば、この先最終的には俺のこれを比奈のここに入れるわけなんだけど」

 これ、ここ、と言いながら、先輩は自分の股とあたしの股を交互に指す。これを、ここに……え。

「どゆこと……」
「まあ、そのうちやるから分かるよ」
「う、え」

 あはは、なんて笑う先輩に、かあっと頬が熱くなった。
 鈍いとかいろいろ言われるけど、一応、先輩の言っている意味は分かっているつもりだ。昔保健の授業でやっていた気がする。でも、あんなことを本当にするとは思っていなかった。
 お茶の時間にしようか、と先輩があたしを膝から下ろして立ち上がる。ローテーブルの前に座ったかたちになったあたしは、しばらくの間呆然としているしかなかった。