出会い誤解そして和解
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 中庭を横切っていると、頭上からひさとせんぱーい、と声をかけられた。顔をそちらに向けると、窓から身を乗り出した比奈ちゃんと梨乃ちゃんが見えた。

「おはよーございまーす!」
「おはよ」

 なぜか、あれ以来懐かれているのだ。……梨乃ちゃんは、未だ訝しげな目で俺を見てはくるのだが、比奈ちゃんが彼女を引っ張るのと、比奈ちゃんのことが心配なのと、半々くらいの割合の心境の末、俺と接する機会が多くなっているようだ。
 ファーストキス――と、確信してみる――まで奪った俺がどうして比奈ちゃんに懐かれたのかは不明だが、犬猫のようで悪い気はしない。悪い気はしない、のだが。

「うーん……不安だ……」

 梨乃ちゃんがあんな必死こいて世話を焼く理由が、少し分かったかもしれない。少し、警戒心と危機感がなさすぎる。ちょろいにもほどがあって、特に何もしていないけども、何だか悪いことをしている気分になる。

「先輩! 今日比奈、屋上でご飯食べてもいーですかー」
「ああ、うん……」

 別に、屋上は俺の許可が必要というわけではなく、単に周りから恐れられている素行の悪い友人が占拠してしまったから誰も近寄らないだけで……と、だからそんなことはどうでもよくて。
 どうしてこんなことになっちゃったんだろうか。
 ただ、臙脂色のリボンと飴色のショートヘアと黒い目と、桃色の弁当箱。――ついでに、美人な後輩。
 しばらく、昼食がにぎやかになりそうだ。

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