愛してるから縛るのだ
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「ど、これ、何、穴……」
「拡張してんの。めんどいしこれ以上広げる気はないけど」
「かくちょう……」

 あわあわと目を白黒させる、予想通りの比奈のリアクションに少し笑う。これで2Gまで拡張してるあゆむの耳なんか見た日にはどうなることやら。まああゆむの耳は拡張どころの話じゃないんだけど。

「比奈もピアス開けてみない?」
「えー……痛いですよぅ」
「痛くないよ、一瞬だもん。ケアがちょっと面倒なだけ」
「んん……」

 いくつも並ぶ可愛いピアスに心揺さぶられているようだ。あと一押しかな……。

「俺とお揃いにしようよ」
「お揃い……むむむう……」

 意外としぶといな。
 ホワイトデーにでも無理やり開けてあげようかな、なんて思いつつ、それ以上ピアスの話題は出さず、ドトールに寄ってお喋りして、駅前をあとにした。
 まあ、そんなこんなでバレンタインもあっという間に過ぎて、学年末考査が近づいてきた。
 梨乃ちゃんに拝み倒してなんとか講師になってもらい、ちまちまと勉強をしていた俺に、またしても災難が降りかかりそうだ。

「お兄ちゃんがね、大阪から帰ってくるんです!」
「……ふうん」

 あのうるさいお兄さんか。ずっと大阪に転勤になっていればよかったのに。とは、喜んでいる比奈にはとても言えないが。
 帰ってきたというのはまさかあのマンションにか。

「はい、お兄ちゃんは東京で働いてるので、うちから通うですよ!」

 最悪だ。同じ家に住んで、俺という悪い虫のチェックも怠らない、と。
 そう考えると、今回東京に戻ってきたことがなんだか策略のように感じるのだが、気のせいだと思いたい。
 いつものように比奈を送って、マンションのエントランスで彼女の姿が消えるまで見送る。ふうと息をついて帰ろうとすると、後ろから肩を掴まれた。

「……何」

 振り向くと、学校帰りと思われる筋肉が俺を睨んでいた。部活でもあったのか、白いエナメルバッグを肩から提げている。

「お前、こないだ雄飛兄に何聞いた」
「こないだ……ああ、正月?」
「ああ」
「別に何も……なんか、反対する理由があるから反対するって言われた」
「詳しくは聞いてないんだよな?」
「まあ、うん」

 いつになく、筋肉とスムーズに会話ができている気がする。いつもなら帰れ帰れの一点張りなのに。キスも何もしないで比奈を送ったことに好印象でも持たれたのだろうか。

「正直言って、比奈のことはおすすめできないんだよなぁ」
「何それ」
「いや、そりゃあ可愛いし素直だしめちゃくちゃいい子なんだけど……」

 ものすごいえこひいきだ。