愛してるから縛るのだ
05
今年の比奈ちゃんも可愛い。来年の比奈ちゃんはきっともっと可愛い。
母さんと一緒におせちを作っている小さくて細い後ろ姿はもう、俺のところに嫁に来てくれと言いたくなるほど可愛い。そういえば小さい頃は「にーにのおよめさんになる!」って言ってくれたよな。
それが、どうして……。
「お兄ちゃん?」
「ん、なんだ?」
「これ、味見して!」
栗きんとんの、栗を入れる前段階の芋を口元に差し出され、食べる。比奈ちゃんからあーんしてもらえるなんて幸せだ。
いやそんなことより、今重要なのは別のことだ。
「な、なあ比奈」
「なあに?」
「その、先輩ってのは、どんなやつなんだ?」
「えっ? えーと……すごくきれいでかっこよくて、背が高くって、とーっても優しくって、おめめ青いの」
「……外人?」
「ハーフなんだって」
そうか……とりあえず不細工ではないのか、一安心…………ってそんなわけないだろう!
比奈ちゃんにたかる虫けら男どもは、不細工だろうがハリウッドスターだろうが許さん。
「あー、それで……その先輩くんとはどこまで行ってるのかな?」
「どこって?」
「いや、まあ、うん、やっぱいいや」
聞くの怖いし。
これでもし初エッチも済ませていたら、俺は二度と立ち直れない。比奈ちゃんは純粋なままでいてほしい。
俺のいぬ間に高士と翔太の目を盗んでちゃっかり比奈ちゃんをものにするとは、よっぽど汚い野郎に違いない。くっ……考えれば考えるほど怒りが増してくる……。
とりあえず明日初詣でになんか行かせるものか。
親指の爪をぎりぎりと噛みながら、相手の男の容姿を想像しては憎悪を燃やす。俺の可愛い可愛い比奈ちゃんをたぶらかしたチンピラをどう料理してやろうか……。
「お兄ちゃん? 大丈夫?」
「大丈夫! お兄ちゃんに任せなさい!」
「う? 何を?」
「あ、いや、なんでもない」
比奈ちゃんの純粋無垢な心は、にーにが守ってやるからな!
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