愛してるから縛るのだ
04

 ああ……俺と翔太は顔を見合わせて互いにため息をつく。
 言いやがった、比奈。こんなことならもっと早いうちに釘を刺しておくべきだった……。
 ぽかんとした顔で、恥ずかしそうに顔を両手で覆った比奈を見つめていた雄飛兄が、怪訝そうに聞き返す。

「かれし?」
「うん。……なんか恥ずかしいからあんまり彼氏って言わないでね」
「かれ、し……」
「すごくかっこいいんだよぉ」
「……」

 雄飛兄が、ふらふらと頭を抱えながら、俺たちの座っているソファまでやってきて、倒れ込んだ。そして、俺たちをぎろりとにらむ。

「……どういうことだ」

 地を這うような恐ろしい声色に、俺たちは思わず震える。

「や、あの……」
「なんて言うか……」
「比奈に彼氏ができたってのは本当か!」
「ま、あ、本当と言えば、本当」
「お前らがついていながらなぜそんなことに!」
「いや、だって学校生活までカバーできないし」
「知らないうちにいたんだよ、俺らは戦えるだけ戦ったし……」
「問答無用!」
「ぎゃあ!」
「いたっ!」

 翔太に片手でチョークスリーパーをかけながらうつぶせに寝転んでいた俺の首に腕をかけて背骨がきしむほど持ち上げる雄飛兄は、完全に切れていた。
 と、そこへ救いの声が響く。

「お兄ちゃーん、これ味見してぇ」
「はいはい!」
「……げほっ」
「相変わらず容赦ねーな……」

 ぴゅんと飛んでいった雄飛兄にため息をついて、翔太と一緒に首をさする。
 明日は桐生がこのマンションまで比奈を迎えに来る手はずとなっている、たしか。鉢合わせしなきゃいいけど……無理だろうな……。