愛してるから縛るのだ
02

「なんだって?」
「だあからぁ、お正月は先輩と初詣でに行くの!」
「……比奈、それは考え直せ。正月は、ほら、神社も混むし、三箇日過ぎてからでも遅くないぞ」
「そうだよ、比奈。人ごみ嫌いでしょ」
「やだぁ。もう約束しちゃったもん」

 困った。これはまずい。
 よりにもよって正月に比奈が男関係で家を空けるのは絶対にまずい、やばい。女友達と初詣でに行くのだって渋った彼が、彼氏と初詣でなんて許すはずもない、というか初詣で以前に交際を許すわけがない。
 言ったら卒倒するだろうと思ってたまにかかってくる電話でも比奈に彼氏のことは話すなと言っておき隠していたが、さすがにもうそんなことできそうにもない。

「……どうする、翔太」
「どうするもなにも……いくらなんでももう限界じゃないの」
「だよなぁ……うわー、雄飛兄、倒れなきゃいいけど……」
「がんばってね」
「なんで俺だけがこんな役なんだよ、たまにはお前がやれよ」
「わざわざ痛い目は見たくない」

 くそ……翔太め、可愛げのないガキに成長しやがって……。
 先週、大晦日にはこちらに帰ってくると電話で言っていた。もう今日は三十一日だ。そして比奈が桐生と初詣でに行くと言っているのが一日……時間がない。とりあえず比奈には、なんとしても一緒に行く相手は女の友達だと言い張ってもらうことにして、今回はごまかそう。そして機会を見て打ち明けることにしよう。
 おばさんと一緒におせちを作っている比奈は、なんだか前よりも可愛くなった気がする。桐生のおかげか?

「なんか手伝うことある?」
「じゃあかまぼこ切ってー」
「おう」

 俺の家は両親とも仕事命で海外に行っているため、相沢家には小さなころからお世話になっている。翔太は母親がいるからそうでもないが。だから、相沢家のおせちの手伝いをして明日はここで新年の挨拶をするのも、恒例となっている。相沢家はいつもにぎやかなので、案外さみしい思いはしてこなかった。ここは居心地がいい。
 だからこそ、桐生のことを雄飛兄に説明するのには細心の心がけが必要なのだ。
 と、部屋直通のインターホンが鳴り響き、ドアががちゃりと開く音がした。