02
昨日の大荒れが嘘みたいな晴天だ。台風一過というやつか。
学校までの道のりをてくてく歩いていると、背後から声をかけられた。
「頼ちゃん、オハヨー!」
「あ、おはよう」
あゆむのお友達の日野くんが転がるように走ってきているところだった。半袖のポロシャツに、くるぶしまでまくり上げたスラックスだ。わたしに追いつくと、日野くんは少し息を整えて話し出す。
「昨日すごくなかった、台風」
「すごかった。けっこう近くに雷落ちたりして」
「そうそう。風もかなり吹いたよね……ところでさあ」
「何?」
「昨日頼ちゃん、あゆむと一緒にいた?」
「ううん、どうして?」
「や……あれー」
何、何なの。
首を傾げた日野くんに、怪しいと思う気持ちがふつふつとわいてきて掴みかかろうとしたところで彼が口を開く。
「昨日あゆゆんに電話したら超不機嫌でソッコー切られたから、頼ちゃんとの時間を邪魔したかと思ったけど」
「あ……」
わたしが電話かけた時もすごく不機嫌だったことを思い出す。
下駄箱で靴を履き替えて階段を上る。教室の違う日野くんが別れ際に手を振ろうとわたしに向き直った時に、あっと声を上げた。
「おはよ! あゆゆん!」
「……ハヨ」
「あゆむ、おはよう」
「おう」
振り返ると眠たそうな顔のあゆむがそこに立っていた。きれいな金髪の毛が窓から差し込む光を乱反射させている。眩しい。
あゆむと教室に向かいながら、わたしはそれとなくさりげなく聞いてみる。
「昨日、さ」
「あ?」
「なんか機嫌悪かったよね……」
全然それとなくなかったし、さりげなくもなくなってしまった。つい、昨日放置された恨みが声色に出てしまったのが自分でもよく分かった。
あゆむは、ああ、とため息をついて首を横に数度振った。
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