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 雨が吹き荒れている。窓に叩きつけられるように雨粒が風にあおられて、ばちばちと音を立てていた。時折、遠くのほうで雷鳴が響く。こちらのほうに落ちてくる心配はなさそうだけど、気になるものは気になる。
 大雨暴風警報が出たので、学校は休みになった。電車も止まっているみたいだし、休みでなくともわたしはきっと辿りつくことができなかったのだろうが。
 クーラーの効いた部屋でぼんやりしながら、窓の外を見ていた。遠くの空がぴかっと光る。ああ、けっこう今のは近かったかも。
 昨晩からあゆむとかわしていたメールのやりとりは今朝になって途切れてしまっている。もちろんわたしが途切れさせたのではない。
 何度もメッセージの問い合わせをするが受信することはなく、もしかしてどこかで電波が悪いのかなと思ったが、メッセージはありません、ときちんと表示されるし、画面の上のほうを見れば一応良好であるようだ。つまり、メールの取りこぼしをしているわけではない。とするとあゆむがメールを返していないと考えるのが妥当なのである。
 もしかしてまだ寝ているとかじゃないよね。

「……」

 あゆむの電話番号をプッシュして、耳に当てる。コール音がずいぶん長く響いて、諦めようかと思った瞬間それが切れた。

『……もしもし』
「あっ、おはよう、寝てた?」

 聞きつつ、低い低い機嫌の悪そうな声が寝起きではなさそうなことは分かっていた。何か、都合の悪い時だったのかもしれないなと思いつつ形骸的に、寝てた、と問いかける。

『起きてた』
「メールなんで返してくれないの?」
『……めんどくさい』
「えー!?」
『耳元ででけえ声出すんじゃねーよ』

 なんでこんなに不機嫌なんだろうか。
 と、その時外で大きな音が鳴り響いた。けっこう近くに、雷が落ちたようだった。

「……びっくりした。今の、けっこう近かったね」
『……』
「あゆむ?」
『寝る』
「あ、え、ちょっと」

 ぶつっと通話は切れた。嘘でしょ、電話をかけたタイミングが悪かったかもしれないけど、まさかいきなり切るなんて。
 いや、まあ、あゆむに限ってはよくあることなのだけど。
 つうつうとむなしく響く音を聞きながら、わたしはぼんやりする。また空がぴかっと光って、大きな音が鳴り響く。わあ、近いな。
 雨と風は勢いを増して、この台風はほんとうに今日中に通過するんだろうかとか、明日は学校に行けるのだろうかとか心配になる。
 わたしが住んでいるところはまだ台風の中心から外れているから平気だけど、台風の目に近いところの地域なんかきっと大変なことになっているんだろうなあって、テレビをつけなくても想像がついた。
 ベッドにばふっと横になって携帯を恨みがましく見つめる。いきなり、寝る、はなくない?

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