06



 けっこう本格的なんだなあ、と他人事のように思う。
 あゆむが選んだここがそうなのか、どのフォトスタジオもそうなのか、分からないけど。
 メイク担当の人にメイクを整えてもらっている間、わたしはずっとそわそわしていた。
 メイクが仕上げに入ったあたりからは、心臓が破裂してしまいそうで、せっかくカラーコントロールした肌が赤くなっていないか心配なくらいだった。
 そのまま、ベールをかぶせてもらって、ブーケを持たせてもらって、控室を出る。

「あゆ……」
「あ、終わった?」

 夢みたいだ。
 あゆむが、あわい銀色のタキシードを着て、スタジオの椅子に腰かけて待っていた。
 ぶわっと気持ちがあふれ出しそうになってしまう。泣きそうになったのを慌ててこらえた。お化粧落ちちゃう、せっかくきちんとしてもらったのに。
 あゆむが立ち上がって近づいてきて、わたしのグローブに包まれた手を取った。いつもの強引さが少し引っ込んだ、ちょっと余所行きのあゆむ。

「ねえ」
「ん」

 撮影する前の、ドレスのチェックとかをやってもらっている間に、そっとあゆむに話しかける。
 スタッフさんたちがライトを調節して、ちょっとまぶしい。

「笑わないでね」
「何を?」
「わたし、今世界で一番幸せ」
「……」

 カメラマンさんがカメラの前に立つ。わたしとあゆむはそちらに向き直る。
 シャッターが切られる直前に、あゆむがぼそっと呟いた。

「俺も」


20131112

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