03
なるほどね、俺がどう思うかなんて考えずに、男とふたりでライブに行くのはお前の中で決定事項だったわけね。
ふざけんなよ。
「じゃあ俺も、女とふたりで飯食ってくるわ」
「え……」
「なんか前から誘われてて? めんどくせえから断ってたけど? お前がライブ行くなら俺もその日暇になるしまあ行ってもいいかと思うんだけど」
「だ、だめ!」
自分勝手にもほどがある。
片腕を浮かせて、ひよの顎を手でつまみ、顔を上げさせる。俺の言葉に表情をこわばらせて、ぎゃんぎゃんわめきだす。
「それってあゆむのクラスの小野さんでしょ!? だめだよ、あの人あゆむのことほんとに狙ってるもん!」
「お前自分が俺に同じこと言ってる自覚ねえんだ」
「え?」
「お前が言ってるのって、そういうことだろ。自分に気のある男と、ふたりでライブ行ってきます、俺の気持ちはどうでもいいです、わたしが行きたいから」
青かった顔が、なんでか知らないけど赤みを増した。
それから、ぶつぶつと言い訳しだす。
「今岡くんは別にわたしのこと好きじゃないと思うけどな……ライブ行くだけだし、全然違うと思うんだけど」
「本気で言ってる? 本気であいつがお前に気がないとか思ってる?」
「…………」
不自然に目を逸らして、だんまり。やっぱり、気づいてんじゃねえか。こいつたちワリイな。
しばらく沈黙して、ひよは俺の服の裾を握った。その手は、細かく震えてる。
「……ごめんなさい……」
ていうか、スルーしたけどなんでこいつ俺に誘いかけてくる女の名前知ってたんだろう……。
まあでもとりあえず、こいつは全然まったくもって、分かってないということが分かった。
「きちんと分からせねえといけねえよな?」
「え……?」
「お前が、誰のもんなのか、じっくり、はっきり」
いくらひとけがないからと言って裸に剥くのはさすがにかわいそうだし、入れたらなんだかんだめんどくさい。
早退を心に決める。
覚えとけよ、ほかの男とどっか行きたいなんて、以後考えようとも思えなくなるくらいにめちゃくちゃに刻み込んでやるから、身体中に。
に、と笑うと、ひよがぱちぱちとまばたきをした。
20130520
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