03



「今日、スタバでお茶じゃあ……」
「馬鹿かスタバはコーヒーだ」
「いやそうじゃなくて」
「気が変わった」

 あ、はい、そうですか……。
 思い出すこと半年前。いや、半年と少し前。
 あれは高校一年生の夏休み前のことだった。当時わたしは、遠くから見つめるしかできなかったあゆむのことが大好きで大好きで、軽くストーカーと化していた。もちろん今でも大好きだということは変わってはいないが。
とあることがきっかけで彼と話をすることができたその翌日、抱かれた。何がどうなってるんだ、という指摘はいらない、わたしだって分からなかったのだから。
 分からないまま、彼からはなんの言葉(付き合おうとか好きとか、そういう類のやつ)もなく、ほぼ毎日、放課後になると家に呼ばれ体を重ね、休日にはバイトがあるとかであまり会ってもくれなくて、完全に都合の良いセフレ状態だった。
 しかし。
 どうやらとっくに付き合っていることになっていたらしく、勘違いをしていたわたしが逆に怒られた。。
 ……と、そういういきさつを経たわたしたちの交際を、わたしの友達がいい顔をするわけもないのも当たり前と言えばそうで、わたしも彼の言葉足りなさには迎合していない。
 もっと甘い言葉、言ってほしい。そう思うのは女の子としては当然の願いだけど、それが叶うかどうかはそれぞれの彼次第。わたしの彼の場合はそうじゃなかったというだけだ。
 迎合はしていないけど、諦めはついてきた。
 気持ちはすっかりスターバックスになっていたわたしに、あゆむが嫌そうに呟く。

「今日、駅前で姉ちゃんたちが遊ぶっつってんだよ」
「それが何?」
「あ? 里玖さんスタバ好きじゃねぇか」
「だから、すずさんの彼氏がスタバが好きで、それがなんなの?」

 あゆむの顔色が変わる。

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