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 さて、そんな奇妙なセンスの持ち主がなぜ皆から敬遠されたり恐怖のまなざしで見られるのかというと、これこそ答えは単純明快だ。
 まず、一言であゆむを表すとするならば、『傍若無人』である。
 人の話は聞いてくれないし、自分の欲にこれでもかというくらい忠実だし、なんと言うか考え方がもう自己中心的なのだ。当然、人付き合いがうまいわけもなく、友達は数える程度しかいない。
 それから、内外ともに、怖い。もともと色素が薄いのだそうだが、それだけでは説明のつかない派手な金髪に前髪部分には黒っぽいメッシュが入っていて、その長めの前髪から覗く茶色の瞳は、眉とセットでつり上がっている。気に入らないことがあればすぐ睨みつけるわ、それが原因で売られた喧嘩は律儀に買ってくるわで、生傷も絶えない。

「真中とは目を合わせるな」

 うちの学校の、面倒ごとに巻き込まれたくないおとなしい生徒や先生、つまり穏健派の合言葉はこれだ。なんでも、目を合わせると石にされるとかされないとか。メデューサじゃあるまいし。まあ、石というのは比喩的なもので、つまりガンつけられるのが怖いんだ、ということだ。
 そんなこんなで、一般生徒には敬遠され、チンピラの類には睨まれるうちのダーリンを、わたしの目から見ると、とんでもない「俺様」だ。

「あれ、あゆむ、どこ行くの?」
「俺んちに決まってんだろ」
「えっ」

 腕を掴んでいた手は、わたしの手に移り、傍目には仲良く手を繋ぐ高校生のカップルという感じだが、実際はわたしがあゆむに引きずられているも同然の状態で、彼の歩幅に合わせているせいで足はもつれそうだ。もう慣れたことだが。
 そして、わたしが家に帰るには徒歩二十分ほど向こうにある駅に向かわなければならないわけだが、方向が違う。今日は、駅前のスターバックスで新作のケーキを食べる予定だったはずだが。なぜ、いつの間に変更されたのだ。

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