あ焦がれ

貴方を妬んで、嫉妬して。それでも私は貴方から離れられなかった。いつだって、例えるならそう、夜の間だけは忘れられても明けたならその存在を痛いほど主張する太陽の様に私の心を焼き尽くしてやまない。夜の柔らかな綿紗が冷ました頬を容赦無く暴き出して、白日のもとに全てを晒してしまう。紛い物を寄せ集めて、どうにか体裁を保っている私の身体は陽光のもとでは酷く白茶化てしまうのだ。留め具と留め具の間で酷使されるうちに鍍金は禿げ、他人の掌が滑る肌は垢が染み込んで離れない。只管に耐えるため、最後の砦として閉ざした瞼さえも通り越して白光は網膜を焼く。「だいすきよ、あなたが」憧れがそう優しく囁くたびに私の鼓膜は震え、堪えきれないとでも言う様に破れてしまう。他に音を拾う術さえなくした耳は、貴方の言葉だけを永遠に反芻させて役目を終える、のだろう。貴方がそう言って笑うたびに、私の胸は張り裂けるほどに痛むのに、私は貴方から離れることが出来ないでいる。焼かれた盲目と、破かれた耳とで必死に貴方を手探って、置いていかれない様に縺れる足で走る。そんな私を貴方は優しく拾い上げて、ふっくらとした柔らかな掌を私の枯れ木の様なそれに重ねて、それから。貴方はいつだって弱い私を愛してくれる。夜がくるたび、貴方から逃げようとする私を、笑って許して、その膨らかな唇で私に囁く。「だいすきよ、」告諭する貴方は本当に眩しくて、映し出される私の汚さが恥ずかしくて、それでもどうしようもない私を貴方は。

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