へびがみ

斬って、斬って、斬って。その鋒を返して、刀は最後の一人の胴を貫いた。噎せ返る様な血臭、夜と混じり合った土埃が鼻腔を掠める。溢れ出した臓腑が、ぴちゃりぴちゃりと音を立てた。手にしていたはずの提灯を捨てたのは何時だったか、一人目を斬った時か、二人目を斬った時か、それとも彼等の気配に気が付いた時だったか。どちらにしろ手元に既に明かりはなく、月などもとうの昔に隠れてしまっている。今宵は曇空だった。「此の儘では、帰るにも心許ないか、然し」此処に留まった侭、と言うのも拙い。明るみに、即ち夜が明ければこの惨状は誰の仕業だと言うことになり、奉行所の動くところとなるだろう。向こうは切りかかって来る前に名乗る事をしなかった。少し逡巡する様にぐるり、と辺りを見回してぱん、と手を打つ。袋小路となった路地には良く響くその音、呼応する様に夜が深さを増した。「呼んだ、だろうか」縦にすれば人よりも遥かに長いだろうか、何尺あるのだと言う大蛇がずり、と這い出してきた。「呼んださ、呼んだ、さあ、これを食べてくれ」血の一滴、臓物の一つも残さぬ様に。

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