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 5超で島崎にプレゼント


「ハイこれ。島崎にプレゼント」
「…何です?これ」


徐にプレゼント、と言われて島崎は見動きを止めた。
「両手出して」という声に従えば、掌の上に何か箱のような物を置かれる。
改めて「…何ですか?」と聞くと、峯岸が一瞥して「靴の外箱みたいだよ」と教えてやると手許の本に視線を落とした。


「あの……見てもらっても?」
「僕の目今塞がってるから」
「俺で良ければ」


そう言って芹沢が島崎の代わりに箱の中身を見てみる。
「あ。革靴ですよ」と芹沢は島崎の手から箱を預かった。


「靴?私、サイズを教えたことなんて無いですけど」
「俺が教えたんだ。贈りたいって相談されてな」


疑問を抱く島崎に柴田が答える。


「……それは…いつ」
「ん。アレの誕生日に飲み行った時か?座敷だったろ。だから俺がトイレ行くついでに見てやった」


誕生日。
そう言われて島崎はこのプレゼントの送り主が居る方に顔を向ける。

数ヶ月前、ひとつ歳を重ねた彼女への祝いということで祝われる本人希望の元乗り気でない飲み会に出た。
そこでやけに羽鳥が絡んで来て、「絡み酒が隣なんてやっぱり早々に引き上げれば良かった」なんて思ったことを思い出す。


「…まさか羽鳥まで関与してましたか?」
「はは、バレちゃった」
「……第一、何でプレゼントなんです?私、何も祝われるようなことに心当たりがないんですが」
「それはだね!」


バッと目の前にカレンダーが差し出されて、そこには今日の日付に赤丸と文字が記入されている。
しかし島崎は紙類が広げられた音がわかるだけで、怪訝そうに眉をひそめた。
空き箱を抱えたままの芹沢が「…タップダンスの日?」と書いてある文字を読み上げる。


「そう!ということでだね、経験者の島崎がより輝けるようにと思って」
「…それで、このプレゼント…ですか」


手中の靴の足底を撫でるとヒヤリとした感覚が指先に伝わる。
「靴ってコレですか…」と小さく島崎が呟くと、「ホラホラ履いて履いて」と急かされた。


「…やりません」
「えぇー!告知以外にも活用してよそれ」
「私に何のメリットがあるんですか」
「観客がいる喜びとかじゃないか?」


柴田が見下ろす脇でタップシューズが存在を主張するように光を反射している。


「私アレが見たいな、○リー・ポ●ンズのやつ」
「…消されますよ」
「あっ!羽鳥、ピー音!ピー音だして!」
「急に言うな!」
「んとね、メリー【ピーーーーーーーーー】見たい!」
「ですから!!」


利権問題がメリットが、と二人が言い争い、時たま響く規制音に峯岸は「静かにしてよ…」と読書に集中出来ず苛立っている。
そんな険悪としているムードの中、芹沢だけが「今日も皆仲良しだなぁ」と一人和やかに立っていた。





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