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泉ちゃんの左手薬指に嵌められた、控えめなシンプルな指輪。彼女の白い手によく馴染んだそれは、とても綺麗だ。


「あ、でも私も隆二も卒業してからだけどね」

「そっか……うん、おめでとう、泉ちゃん、隆二さん」


泉ちゃんの隣に立って、同じように照れくさそうに微笑む隆二さんが頬をかく。いつも玲央や豹牙先輩に振り回されていた隆二さんだからこそ、その幸せは人一番感じて欲しい。穏やかな気持ちで二人を眺める俺に、けれど泉ちゃんは控えめに声を出す。


「……良かった。虎くんは優しいから、そう言ってくれると思ったけど、私、軽蔑されるかなって少し不安だったから」

「軽蔑? なんで?」

「……だって私、ただのフリだけど玲央と付き合ってたくせに、別れてすぐ隆二と付き合ったから、うん、だから軽蔑されるかなって」


そう言う泉ちゃんの顔に影が射す。その様子になんとなく彼女の苦労が垣間見えた気がして、俺は苦笑を浮かべた。


「そうだね、玲央と別れてすぐ隆二さんと付き合った泉ちゃんのことを、よく思わない人はいるかもしれない」

「……うん」

「でもそんなの関係ないと思うな。だって選んだのは泉ちゃんと隆二さんでしょう? 二人はちゃんと付き合って、今は未来の約束をしてる。それは二人で選んだことだよね」

「うん……そうだよ」


泉ちゃんの肩を支えた隆二さんが俺を見る。その瞳は俺を責めるでもなく、突き放すものでもない。その後ろで呆れた様子でこちらを見ていた玲央と目が合って、思わず微笑む。


「……うん、俺はさ、泉ちゃん。俺は人がとやかく言おうと、自分が好きになった人が、自分を好きになってくれたなら、その人のことを誇りに思うし、大事にしたいな。だから誰かがなんて言っても平気。悔しいならねぇ泉ちゃん、周りが口出しできないくらい幸せになっちゃえばいいんだよ」

「……虎くん」

「だから泉ちゃん、幸せになって。そんで隆二さんと一緒にさ、たまにここに来て教えてよ、今すごく幸せだーって。ね?」

「……うんっ! ありがとう、虎くん……っ」


どういたしまして。潤む瞳を細めた彼女に微笑めば、隆二さんも一緒に微笑んだ。




 


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