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「雰囲気ぃ、かわったのよねぇ。やさしくなったっていうのぉ? ちょっとぉ、すきができた感じかなぁ、あーうん、とにかくねぇ! まえよりおふぁーがきてちょー大変なんだからぁ!」

「……え、あ、はい」


普段から酔っ払いに囲まれている俺だが、匡子さんのようにあからさまな酔っ払いも確かに多い。けれど少なからず顔見知りの彼女相手に下手な態度をとることもできず、むしろ肩にくい込む爪が痛くて動けない。つけ爪ですか、長くないですか?


「でぇろでろにあまぁい空気さらしちゃってさぁ、ふぁんも増えたしぃ、もう、ほんとぉありがとぉ!」

「いたっ、ちょ、匡子さん!?」


まるで突撃してくるように抱き着いてきた匡子さんに軽くパニックを起こす俺に、容赦ない玲央は彼女の首根っこを掴んで引き離した。おい、匡子さんはお前の雇い主だろうが。なんて突っ込みたいが正直助かったのでそれは口にしないでおこう。


「ちょっとお母さん……っ」


そんな恐ろしい現場に現れた泉ちゃんと隆二さんは、大型獣の魔の手から匡子さんを救いだす。ついでに後ろについてきていた西さんが匡子さんを担ぐと、寝息を立てている彼女を少し離れた席へと運んで行った。


「もう……ごめんね虎くん」

「いや、大丈夫だよ。それより匡子さんのほうが大変そうだけど」

「気にしないで。お母さんって普段頑張り過ぎちゃうとこあるから、お酒飲むとすぐ酔っちゃうの。あ、でもあんなに酔うのは久しぶりかも」

「あはは、疲れてたのかもね。なら、起こさないようにしないと」

「うん、そうだね」


にこり。微笑む泉ちゃんの笑顔はやっぱり花がぽんぽんと咲きそうなほど可愛らしい。そんな彼女に会うのも久しぶりだなぁと考えていると、俺は前までなかったそれを見つけてしまった。
俺の視線に気づいた泉ちゃんは、少し照れくさそうな笑顔で手を見せる。


「私ね、隆二と結婚するの」




 


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