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酒盛りではいつも以上に馬鹿なノリを見せるみんなだが、そんな中で無理やり隣に座らされていた巴さんとノエルさんは体の方向まで互いとは逆の方向を向いて無言である。俺は自分のグラスを持ち直し、シャンパンの瓶を持ってそちらへ近づく。


「二人とも飲んでますか? あ、グラス空いてますね。注ぎますよ」


二人とも空になったグラスを持って黙っていたのか。ちょっと笑いながら巴さん、ノエルさんの順に注ぐと、二人は少しだけ息をついた。


「ノエルさんはえと、ミラノでしたよね。あっちではどういう風にクリスマスを過ごすんですか?」

「え? あ、うん、あっちは家族で過ごすのが普通かな。日本みたいに営業している店も少ないよ」

「へぇ、じゃあ日本は賑やかに見えますかね?」

「うん、外を歩けばイルミネーションも綺麗で、店から漏れる灯りもあるから明るく感じるなぁ。あぁ、でも時期になるとメルカートディナターレがあってね」

「めるかー……?」

「あ、えぇと、クリスマス市って言って、お菓子や飾りなんかの屋台がたくさん並ぶんだよ」


聞き慣れない単語に首をかしげた俺に、ノエルさんはニコリと微笑む。緊張が和らいだのか、彼はますます饒舌になる。


「そうそう、そのメルカートディナターレにはパネットーネやパンドーロってお菓子も並ぶんだけど、僕はパネットーネが好きでノアはパンドーロが好きだから、いつも母さんは二つ作ってくれたんだ。僕たち、そのお菓子を半分こにしながらどっちが美味しいか、なんてよく喧嘩して……」


しかし自分の口から滑り出たノアさんの名前に、彼の顔色が悪くなる。その視線は巴さんに向き、同じように顔色の悪い巴さんは下手くそな笑みを貼りつけていた。


「……」

「……」


またも二人のあいだに流れる重い空気に、だけど俺はつい微笑んでしまう。




 


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