まだ残っている野菜スティックを受け取った志狼は、口をつけたほうとは逆の先端にオーロラソースをつけて咀嚼する。
「ていうかなんでこっちに来たの。アンタは自分のお兄さんのほうに行っていちゃつけば?」
「言われなくとも夜はがっつりイチャつく予定だけど?」
「うわ、最低」
「男なら当然だろ、なぁ小虎?」
変な話を振られてさらに呆れ顔が強くなってしまう俺に、けれど豹牙先輩は変わらずニヤニヤとしている。
「つーかどこまでやった? もう食われたか?」
「殴ってもいいかなぁ」
俺に変わって怒りを露わにする志狼を落ち着かせ、なにかを企んでいるであろう豹牙先輩に向き直る。
「豹牙先輩、それセクハラですよ」
と、一言説教すれば一瞬呆けた豹牙先輩はしかし微笑んで「やっぱお前可愛いわ」とか言い出す始末。それには同意するけどね、なんて一緒になって頷く志狼の肩に軽くパンチすれば、笑いながら謝られてしまった。
「いやいや、でも男同士ってエグいからさー、ちゃあんと準備しないとダメだよ?」
「……司さん、なにしれっと交ざってるんですか」
いつのまにやら豹牙先輩の隣に並んだ司さんがもう眩い笑顔でこちらを見ている。厄介な兄弟が揃ってしまったなぁ、と息をつけば、悪乗りしはじめた二人がここぞとばかりにセクハラし始めた。
「ちなみにゴムはやっぱり○○社のうすーいやつがオススメかなー」
「ローションは○○社のシリコンタイプを使えよ、油に近いから体に吸収されにくい」
「でもやっぱり生が一番だよね、だって男だし?」
と、司さん、豹牙先輩とつづいて最後にしれっと交ざった新山さんの顔に、志狼のアイアンクローが見事に決まった。それを見ていた仙堂さんはここ一番良い笑顔で志狼を褒めだす始末だ。
そんなやり取りを聞いていたらしい仁さんは、煙草の空を司さんの額にヒットさせるのであった。
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