そんなとき、新たな来客の知らせが鳴る。今度は包装紙で包まれたプレゼントの箱をたくさん持った巴さんが現れた。プレゼントで前が見えないのか、若干覚束ない足取りでこちらへやってくる巴さんを見ていたノエルさんは少し固い表情のまま、そんな巴さんからプレゼントの箱を受け取る。
「お、わり……」
「……こんばんは……トモエ」
慣れない発音で巴さんの名を呼んだノエルさんに、彼は目を見開いて固まった。しかし正気に戻ると踵を返して今しがた自分が乗っていたエレベーターへ向かおうと走り出す。が、エレベーターの前には新山さんと仙堂さんの二人が出入口を塞いでおり、巴さんは大きく舌打ちをすると俯いてしまった。
「……」
「……」
二人に流れる沈黙が店内にまで広がって、唯一チキンを食べつづける司さんの立てる物音しか存在しない。
「……トモエ、僕はずっと」
「あ゛ーっ、くそっ!」
しかしそんな沈黙を破ろうと口を開いたノエルさんの声を掻き消して、突然叫んだ巴さんはくるりとノエルさんに向き直ると、ノエルさんの前までつかつかと近寄った。
「殴れ」
そして目の前で止まったかと思うと、そんなことを言うものだからさすがにノエルさんも驚いている。けれど巴さんの真剣な瞳に負けたのか、ノエルさんはくすりと笑みをこぼして巴さんの頬をそっと、ガラス細工に触れるような危うい手つきで一度だけ、撫でた。
「会えて……良かった。メリークリスマス、トモエ」
「……おう」
なんだかとても初々しくてたどたどしい、けれど優しい雰囲気に俺はホッと息をつく。
「いやー、青春映画でも見てる気分だなぁ〜」
「俺らにはもうねーからなぁ〜」
だと言うのに、やっぱりチキンを食べる司さんは暢気なもので、おまけにいつの間にか隣に並んでいる新山さんは仙堂さんに氷を投げつけられ、豹牙先輩に蹴られていた。
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