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「おいトラ、お前まさかクリスマスやったことねぇのか?」

「え? あ、いや。物心ついたときからって意味ですよ。さすがに幼少期は祝ってたと思いますし」

「おいじゃあ小虎、お前小学? 中学か? その頃からやってねぇのか? ずっと?」

「え、えぇ、はい。そうですね、小学校からそういうの、やってないですね、うん」


おいマジかよ。と、再び二人の声が重なるが、俺はぼんやりと記憶の中を探ってみる。親父と二人で過ごしていたとき、そういえばイベントらしいこともなにもなかったなぁ。誕生日だけはケーキを買ってもらった気がするけど、いつからかそれも無くなったっけ。


「あ、でも外の雰囲気がこう、賑やかになる感じは楽しみだったなぁ。なんかこっちまでワクワクしますよね」

「「…………」」


にこり。笑う俺に二人は目元を片手で押さえた。戻ってきた雄樹と志狼はそんな二人の様子に怪訝な表情を浮かべていたが、仁さんから事の経緯を聞くと雄樹は目を潤ませ、志狼は俺の頭を撫でてくる。なんなの。


「てめーら、二十四日はクリスマスやんぞ」

「当たり前だよ仁さん!」

「小虎、一緒にツリーも飾ろうね」

「よし、じゃあ俺は人集めするぜ」


と、なんだか変なやる気を見せた四人に「いや、別にしなくても……」と声をかける雰囲気はなく、俺は両方から抱きしめてくる雄樹と志狼に挟まれたまま、その日は盛大に祝うと約束を受けたのだった。

その夜、家に帰ると玄関先で任王立ちして待ち構えていた玲央に捕まって、離婚してからやっていないイベントをあれこれ聞かれてしまうハメに。恐らく巴さんあたりに今日のことを聞いたのだろうが、何故か怒り口調なのが納得できなくてふて腐れる俺に、しかし玲央は容赦なく質問攻めをするのであった。




 


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