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「資格とか必要だろ」

「最低でも食品衛生責任者と防火管理者の資格は必要だと言われたけど、それは数日講習を受ければ取れると聞きました。費用はバイトで稼いだ貯金があるので、そっちから出します」


ますます細まる瞳に息を呑む。


「まだ高校卒業までお前は二年ある。そのあいだ気が変わって違う職を目指す可能性もあるだろ」

「なにかに触発されることはあると思います……けど、俺、やっぱりいつも自分の作るお粥と比較しちゃって、どうしたらもっと美味しくなるんだろ、どうしたらみんなに満足してもらえるんだろって、そればっかりで。正直、その可能性をはっきり否定することはできないけど、でもお粥とカシストとお客さんのことばっかり考えてる今の俺には、それしかないや」


ふはっ、と砕けた笑顔を漏らしてしまう俺に、玲央の目元が優しくなった気がした。


「……うん、俺さ、前にも言ったけど、強がってた頃に俺を救ってくれたカシストの存在はさ、大事なんだよな。その場所に連れてってくれた雄樹も、そこで働くことを許してくれた仁さんも、俺のお粥を美味しいって言ってくれて友人になった志狼も、みんな好きなんだ。
そんな大好きなみんながいるあの場所が好き。そこで俺のお粥を美味しいって言ってくれるお客さんが好き。外を歩けば怖い顔した不良たちがさ、あの場所では安心したように笑ってるんだもん、嬉しいに決まってるじゃん?
だからあいつらが少しでも安らげる場所があるなら、俺はそこでお粥を作りつづけたい。優しいくせに傷つきやすいあいつらを、ほんの少しでいい、癒してやりたい。認めてやりたい。
……なんて、ちょっと上から目線かな?」

「さぁな」


くすり。微笑む玲央に同じように笑みを返して、俺は頭を下げた。


「だから今の俺はカシストで働きつづけることしか考えていません」


そう言って、顔を上げる。


「あの場所で自分がしてもらったように、俺のお粥で誰かを救ってやることが、俺の、夢です」




 


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