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ミトンだぞ、ミトン。いつものメンツの中でも雄樹に似合いそうな代物でも、実際雄樹の手袋はカシミヤのチャコールブラウンだ。志狼はレザーのボルドーだし、そんな二人の中で俺だけがミトンでしかも女子がつけていそうな可愛いライトブラウンって、さすがに抵抗がある。


「冷えるよりマシだろうが」

「……普通のが、いいな」

「あぁ?」


いつぞや店内でも繰り広げた口論を思い出し一人ごちる。あのときもミトンは嫌だと首を横に振る俺を振り切って、玲央はそれを購入したのである。買ってもらった立場なので本当は強く言えないのだけど、だからといってミトンはなぁ……。


「むかつく」

「いっ、いひゃい」

「うるせぇ、馬鹿トラ」


素直に頷かない俺の片頬を摘まみ、ぐいーっと伸ばす玲央に痛みを訴えた所でどうなるわけもなく。やっぱり自分本位なこの男に敵うことなどないのだろうなぁ、と。
しばらくそうしていた玲央が、ふいに手を離して俺を抱き上げる。急なことで慌てる俺にどこ吹く風で、玲央はリビングのソファに俺を投げ捨てた。もっと丁重に扱うことをぜひとも覚えて欲しい。


「手ぇ出せ」

「え? あっ、いつの間に!?」


嫌だ嫌だと言いながら、結局鞄の底にしまって持ち歩いていたミトンの手袋を勝手に取り出した玲央が、俺の手にそれを嵌めた。じんわりと温かくなる手の感覚に思わずほぅと息をつけば、玲央はニヤリと口元を緩める。


「ガキくせぇお前によく似合ってんだろ?」

「……むかつく」


ので、手袋を嵌めたままの両手で玲央の頬を挟んでやれば、くつくつと喉を鳴らして笑う玲央が俺の両手首を掴み、こちらへ押し返しながら唇を重ねてきた。


「んっ、んぅ……」


ずるずると、背もたれに沿って滑る背中がソファの布地に押し付けられる。いつのまにか組み敷かれ、唇を離した玲央を見上げれば胸がドクドクとうるさくて。


「はっ、エロガキ。期待してんじゃねぇよ」

「して、ねーよ……っ」


なのにギリギリ一歩手前。玲央はいつもそこで現実へと引き戻す。




 


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