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「でもあれだよねー、冬の誕生日ってなんかヤダなー。寒いもん」

「お前寒いだけが理由じゃねーか」

「つまりその理論で行けば夏の誕生日は暑いからヤダってことになるよね」


雄樹のアホ発言に俺と志狼から責められて、ぐうと声を漏らす雄樹に二人で笑い合う。
男子学生三人が腕を絡めて歩く姿の異様さに、少なからず人目が集まるがそんなことは関係ないと、用事を済ませた俺たちは寒さから逃げるように目的地へ急いだ。

カシストへ向かうエレベーターは今日も混んでいる。その大半はデスリカで降りるのだろうが、俺たちの顔を見た数人の非行少年、少女たちが嬉しそうに挨拶をすれば、そこを中心に人の輪ができた。


「トラちゃん、あんかけお粥作ってよー、あれ温まるんだー」

「トラちゃん、俺あさり粥がいい」

「ねぇトラちゃんトマト粥って知ってる? チーズかけて食べると美味しいんだよ!」


なぜか俺をトラちゃんと呼ぶ少年、少女たちに「トラちゃんって呼ぶな」と言えば、「じゃあトラさん?」なんてからかわれ、それを「やめてトラちゃんはアタシのものよ!」なんて雄樹がさらにアホな発言で場を(不本意ながら)和ませてしまうので、あっという間に人だかりが増えてしまう。
けれどやはり大半はデスリカで降りてしまい、俺ら以外に数人乗せたエレベーターがカシストに着くと、すでに客で賑わう店内で煙草を咥えたままカクテルを作る仁さんがキッとこちらを睨んだ。


「てめーら10分も遅刻したんだ、覚悟あんだろーなぁ?」


事前に遅れることを雄樹から連絡を受けていた彼は、まさに鬼のような形相でこちらを睨む。そんな仁さんの凄味に俺らだけでなく客まで引き気味である。


「ひゃいっ! しっかり働かせて頂きます! ほら、トラちゃんもシローちゃんも」

「え? あ、はい。遅刻してすみませんでした」

「仁さん、それよりお客さん呼んでるよ?」


なのに相も変わらずそれぞれのペースを行く俺らに、ついに仁さんの鉄拳が下されるのであった。




 


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