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冬の寒さの恩恵か、いつもより倍近くお粥の注文が入るのはありがたい。が、人手不足の否めないカシストで志狼もバイトを始めて以来、それはより増した。ただでさえ可愛い雄樹と、強面だけど格好いい仁さん目当ての客足も多かったのだ。志狼ほどの美青年がそこに交わったとなれば、面食いだらけの女子が食いつかないはずもなく。おまけに物腰の柔らかさと丁寧な対応に堕ちる女子の数はいつ見ても圧巻だ。


「トラぁ、俺のお粥まだ?」

「小虎さん、そのエプロン自前ですか?」

「トラちゃん、俺の愚痴きいてー」


そんな中、志狼たちに乙女心を奪われた男子諸君はこぞって俺の回りに集まる。そんな虚しい空気の中心に俺を置くなと説教したこともあるが、どうやら彼らの心は俺の言葉よりも女子からスルーされる悲しみのほうが大きいらしい。
「俺らはトラで癒されてんの」なんて平然と言ってのけられて以来、俺も下手に口出しせず応じることにした。可哀想だとか、そんなことは決して思ってはいけない。


「エプロンが自前だとしたらお兄さんからのプレゼントでしょうね。ブランドにこだわらない小虎くんがつけるにしては、上品で可愛らしいですよ」

「えぇ? 仙堂お前シンプルなのが良いわけ? 男なら黙って裸えぶっ!?」

「あぁ冬なのにハエが飛んでるだなんて、本当に気が滅入りますねぇ」


通常運転と化した漫才を繰り返す仙堂さんと新山さんに苦い笑みを浮かべる俺に、先ほどまで話しかけていた男子諸君は二人をまるで目の敵のように睨みつける。不良少年と警察なのだから、互いに敵意識を持つのは仕方ないとしても、店内で静かな争いを始めるのはぜひとも止めて頂きたい。


「警察ってのは暇なんだねぇ」


そんな空気をさらりと壊して登場したのは、今日もキラリと眼鏡を光らせる司さんであった。




 


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