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街はすっかり冬色に染まった。
まだ雪こそ降らないが、ビル街の隙間風に首筋が襲われて、それに寒い寒いと鼻水を垂らす雄樹にティッシュを渡すと涙目で喜ばれる。
あぁ、旅行に行ったあの頃はまだ秋の中ごろだったけど、行ったあの場所は肌寒さを感じない良いところだったなぁ。なんてマフラーで鼻先まで覆ってしまえば、鼻をかんだ雄樹が俺の腕に自分の腕を絡めて暖をとる。別段断る理由もないし、むしろアホは子供体温なので大人しく受け入れていると、


「ちょっと、なにしてんの」


なんて不機嫌そうな声を出しながら、買い物を終えた志狼が俺たちの後ろで仁王立ちしていた。それで様になるとかなんなの、イケメンなの?


「寒いよシローちゃん、寒すぎるよー」

「だから店の中で待っててって言ったのに」

「だってシローちゃんが入る店、全部リッチな匂いがして怖いもーん。ねー、トラちゃーん」

「ん? んー、うん」


リッチっつーか、まぁ志狼が大人っぽい雰囲気を感じる店ばかり好むのは同意する。さっき見たアクセサリーなんて桁が二つほど違い過ぎて本気で驚いたし。


「仕方ないでしょ、祖母さんに贈るもんだし、下手なものは選べないよ」

「クリスマスはまだ先よ、シローちゃん」

「誕生日だって言ったはずだけど?」


そう、今日は佐代子さんの誕生日プレゼントを買う志狼に二人でついて来たのだ。こっちに戻ってから佐代子さん名義のマンションで過ごす志狼にとって、両親以外の親族を祝うのは初めてらしい。病院の外出手続きは済ませ、当日はこっちの有名レストランで両親も一緒に食事会をするのだとか。
すっかり見慣れた黒髪をなびかせて、志狼が雄樹とは逆隣りに歩み寄る。


「俺も寒いから、こっちは俺が借りていい?」

「あはは、うん、どーぞ」


承諾すれば自然と絡まる志狼の腕の重みが嬉しい。告白されてすぐ旅行へと旅立った俺が帰ったときも、志狼は以前と変わらない距離感で俺の側にいてくれた。
それがどれだけすごいことなのか、きっと今の俺には全ては分からない。だけど変わらない関係でいてくれることに感謝している。




 


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