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――結論から言うと、旅行は楽しかった。それもすごく、楽しかった。
他愛ない話をしたり、屋外の足湯で癒されたり、美味しい料理に舌鼓を打ったり、熱の篭ったイタズラをされて慌てふためいたり、事あるごとに俺に触れ、抱きしめ、幸せそうに匂いを嗅いだり甘噛みしてくる玲央がやっぱり好きだなぁなんて、実感しちゃったり。

帰りは道の駅やら物産館に寄って、みんなのお土産を買う時間も楽しかった。どうしても人目を引く玲央はどこに行っても注目の的だったけれど、はぐれないようにと腕を掴まれ、知らずの内に手が繋がれていた頃にはもうすっかり俺も浮かれていたと思う。
会計のレジで「仲がよろしいのですね」と微笑むスタッフの女性に慌てる俺が面白かったのか、玲央がくつくつと笑っていたのも良い思い出として残しておこう。ちょっと癪だが。

そうして突然はじまった旅行だが、やっぱり終わってしまうと少し寂しいもので。
帰りの道でくたくたになってしまった俺の荷物まで持って、部屋の鍵を開けてしまう玲央に付いていくのがやっとだ。ほんの二日帰っていなかった部屋の匂いを嗅いで、なんだかデジャブを感じてしまうが、あぁでもやっぱり、家が一番安心するなぁ。
けれどこの場所に戻ってきたことで訪れる日常に、少しだけ寂しさを感じるのも不思議な気分だ。


「おかえり、玲央」

「お前もな、小虎」


大量の荷物を玄関先の廊下に置いた玲央に声をかけると、振り向いた玲央に笑われてしまった。なんだかちょっと悔しい気持ちになっていると、玲央はさっさと靴を脱いでしまう。
同じように靴を脱いで荷物を持つと、やっぱり俺より多く荷物を持っていた玲央の背中が旅行前より頼もしく見えた。


「玲央、ありがとう。また……旅行、つれてって欲しい……です」


尻すぼみになる俺の声に笑う玲央が、こちらを振り返ってニヤリと悪い顔をする。


「当たり前だろ」


なんて、頼もしくてもやっぱり抜けきらない自信を見せるその態度ひとつにも、どうしてか喜ぶ自分がいるのもまた事実で。
あぁこの人を好きになれて良かったと、俺も思わず微笑んでしまうのだった。




 


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