今夜はいつにも増して無礼講。いつのまにやら西さんや泉ちゃんも来て、なぜか泣いてる不良たちまで集まって、しまいには酔っ払った豹牙先輩と司さんが殴り合いをはじめた頃、グラスやらを洗っていた俺の隣に仙堂さんが立った。
「お手伝いします」
「あ、どうも。いいんですか? 新山さん置いてきて」
「むしろゴミ捨て場に置いておきたいくらいですよ」
「あはは」
この人なら本当にやっちゃうんだろうなぁ、なんて思いながら、スポンジで洗ったお皿を手渡す。腕まくりした仙堂さんはそれを受け取り、慣れた手つきで水洗いしていた。
「今回、どういった事情でこのような騒動を起こしたか、聞かないんですね」
「え? あ、あぁー……はい。多分、俺が知っちゃいけない世界なんだろうなぁって思うんです。俺が運びをしたとき、多分あれは本物の麻薬じゃなかったと今なら思えるんですけど、でも今回、本物の麻薬は絡んでいたんでしょ?」
「はい、二年前も今回も、麻薬が絡んでいます」
「やっぱり。なら俺、正直聞きたくないなぁ」
だけど俺の意に反して、直感は囁く。仙堂さんは俺に話に来たのだ、今回の事を。
「手短にお願いしますね」
「バレてましたか」
「あはは、なんか仙堂さんって司さんや新山さんとは違う意味で腹黒いですよね」
「光栄です」
にっこり。一見爽やかに見える笑顔の裏はもしかすると、この場にいる誰よりも黒いのかもしれない。
互いに手を止めず、けれども向こう側に見える明るい空気とは違うそれが、俺と仙堂さんの間に流れた。
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