最期の客が店を出た。店内はまだ、静けさの中にある。
少し気恥ずかしくなって頬をかくと、隣にいた仁さんが思いっきり俺の頭を撫でてきた。
「司の負けだ。ったくどこの誰に似たんだか、お前やっぱスゲーよ」
「仁さんずるーい! 俺もトラちゃん撫でる! てか抱きしめる!」
「じゃあ俺も抱きしめるから、雄樹は右ね。俺、後ろから抱きしめるよ」
と、仁さん、雄樹、志狼が左右と後ろから体を寄せてくる。バランスを崩しそうになると、すかさず雄樹と志狼が支えてくれた。
「なんかよく分かねぇけど、やっぱ小虎って玲央の弟だよな。そういうとこ、似てるわお前ら」
と、隆二さんが笑う。
「最近の若いもんは〜って、俺つい言うけどさぁ、小虎くんって違う意味でそう言いたくなるよ。猪突猛進、いやぁ若いねぇ〜」
「新山さんにはもう取り戻せないものですからね。すみません、自分まだこんなに若くて」
「なんでこの流れで貶した!?」
と、新山さんと仙堂さんは相変わらずの漫才だ。
「あーあ、敵わねぇよなぁ……小虎のほうがよっぽど男前だわ」
と、巴さんは苦笑を浮かべる。
「……ありがとな、小虎」
と、カウンター越しに豹牙先輩が微笑む。
「はいはい、俺の負けです。俺の負けでいいです。あーあー、もう本当、君って反吐が出るほど可愛いよ」
と、うんざりした様子でため息をつく司さん。
そんな彼らを横目で見たあと、こちらに視線を向けた玲央は口元に笑みを浮かべたまま、俺に言うのだ。
「ブラコン」
――と。
ここは温かい。そう思える俺のこの気持ちが、作るお粥に溶けて誰かに伝わればいい。
「玲央だってブラコンだろ」
「まぁな」
玲央の発言にみんなが目を丸くするが、俺だけはカラカラと笑った。
カシスト、本日の営業は終了。閉店後の店内で、仁さんが取り出した酒瓶を機に、俺たちは酒盛りをはじめるのであった。
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