「この二人はコトラの友人かな?」
「そうですよ。怒らせると手が付けられないんで、遊ばないでくださいね?」
「あはは。信用ないなぁ〜、ま、トーゼンか」
「はい、当然です」
ふつふつ沸くお粥を確認する。そんな俺をただ黙って見ていたノアさんは、それでもニコニコと胡散臭い笑みを解くことはない。
「なにも聞かないの?」
けれど俺を揺することは避けず、人の悪い質問に俺はまた苦笑を浮かべた。
「ノアさん、貴方が今回の事で俺に罪悪感の一つでも感じていたのなら、そんなことは聞かずに自分から話すべきです。違いますか?」
「……コトラ、なんだか君……変わったね?」
「そりゃあこれだけあれば、変わりますよ」
今にも暴れ出しそうな俺の友人二人に挟まれながら、少し驚くノアさんは苦笑した。
「コトラは……どこまで知ってるの?」
「俺はなにも知りませんよ。誰にもなんにも聞いてません」
「じゃあ色々吹き込むなら今がチャンスだ」
「しませんよ。貴方はそんなこと、もうしない」
静かに沸いているお粥の隣で、味噌を溶かしていた鍋に溶いた卵を敷く。ゆっくりとかき混ぜると、戻ってきた仁さんが動こうとしない雄樹と志狼の頭を叩いた。
「いい加減仕事しろ、給料泥棒ども」
「「……」」
じとりと、自分の頭を叩いた仁さんを見る二人の目は不満げだ。くるりと振り返った雄樹がこちらを見てくる。その瞳は、怒っていると言うよりも寂しそうだった。
たまにはあいつらにも頼ってやれ。と以前言われた仁さんの言葉が甦る。
頼っているからこそ今、俺はこうしてお粥を作っていることをきっと雄樹も志狼も分かっているんだろうなぁ。でもそれ以上に力になりたいって思ってくれる友人二人が、俺はやっぱり好きなんだよなぁ。
「雄樹、志狼。終わったらダーツ行かね?」
微笑みながらそう言うと、二人は焦ったように口を開き、しかし肯定の返事を呟くと仕事に戻った。
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