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まるで茶番のような厄介事は、意外にもあっけなく幕が下りた。


一昨日、玲央を見送ったあと、またも俺の知らぬところで物事は展開を見せたらしく、いつも通りの飄々とした司さんが新山さんと仙堂さんを引き連れた昨日の夜から、俺は豹牙先輩と二人きりとなった。
玲央が戻ってきただけでこうも早く動き出すとは思ってもなく、ちょっと肩透かしを食らった気分である。
そんな俺はカシストにて今日もお粥を作っていたが、ひょっこりと現れたその人物にまた肩透かしを、いや狐につままれた気分だ。


「卵味噌のお粥、お願いします」

「え?」


突然の登場に固まっていた俺の前のカウンター席に座る彼は、以前とは違う大人しい雰囲気を漂わせながら微笑む。
茫然とする俺を不審に思った仁さんに肩を叩かれ、慌ててお粥の準備をはじめると、雄樹とは違うエプロンをつけた志狼が彼に話しかけた。


「アンタ、今回の騒動の原因?」

「え? ……あぁ、うん、元凶です」

「ふーん」


と、冷えた視線で一瞥しながら、志狼は彼の隣に座る。なぜかその逆隣りには雄樹まで座っている。そんな二人を見た仁さんに至っては、ため息をついて自分で料理を運びに行った。

事前に浸水させていた米の入った鍋を取り出し、中を確認してから火にかける。ふぅ、と息を一つ吐く。気がつくと、俺は手に汗を握っていた。


「どうしてここに来たんですか、ノアさん」

「野暮な質問だね。僕はコトラのお粥を食べに来たんだ」


と、笑う彼に苦笑する。

なぜかライトブラウンの革で出来たトランクケースを傍らに置き、どこかすっきりとした好感の持てる服をまとった彼、ノアさんとの再会は驚くほど呆気なかった。




 


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