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「はよ、小虎……どうした?」

「あ、おはようございます。いえ、ちょっと寝違えて……あは、あはははは」


朝一番に迎えに来た豹牙先輩に笑みを向ける。
怪訝な表情をしても深くは突っ込まない彼の優しさに感謝するも、学生らしからぬバイク登校を果たした俺に、問いただすように突撃してきた雄樹の抱き着き攻撃により一瞬生死を彷徨った。

そんな散々な朝を過ごし、昼はお粥捌き、夜はバイト&目指せお粥のてっぺん頂上! をこなす、という生活が一週間つづいた頃、俺の生活にとけはじめた豹牙先輩から言われたのがこれだ。


「小虎、荷物まとめて俺ん家に来い。当分お泊りだ」

「へ? お泊り?」


いつものように俺を玄関先まで送り届けた豹牙先輩の言葉に驚くのは当然なわけで、呆然とする俺の頭をぐしゃぐしゃ撫でた豹牙先輩がニカッと笑う。


「ここ一週間、玲央のやつ帰ってきてねーだろ? 多分まだ帰って来れねぇはずだから、いっそ俺ん家に泊まらないかって相談」

「相談……、命令形でしたよ?」

「あはは、バレたか」


なんて無邪気に笑う豹牙先輩に思わず微笑むが、俺は首を横に振る。


「ごめんなさい豹牙先輩、気持ちは嬉しいのですが、俺はここにいなくちゃ」

「俺ん家じゃ落ち着かねぇ?」

「いえ、そうじゃないんです。ただ、なんていうか……」


確かに一人で過ごすには、この部屋は広くて寒くて寂しいけれど、これくらいのことなら乗り越えなくちゃ。
それになにより、


「なんていうか……玲央が、玲央が帰ってきたとき、ちゃんとおかえりって言いたいから、だから俺はここにいなくちゃダメなんです」


俺が寂しいって思うこの気持ちを、玲央には感じて欲しくはない。
いつぞや俺が地を這ってでも帰ってきたとき、玲央が言ってくれた「おかえり」に救われたように、ちっぽけでもほんの少し、俺も玲央を救えたらいいなと、そう思うから。




 


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