俺の返事を聞いた豹牙先輩は目を丸くし、ていたかと思えば深い深いため息をついて、その場にしゃがみこんでしまった。
慌てて俺も同じようにしゃがみ込むと、なぜか豹牙先輩は腹を抱えて笑っている。
「はははっ、くっ、ふはっ、あー……やっぱすげぇわ、お前」
「え? あの、豹牙先輩?」
「あーあ、ほんっと……かっこいいなぁ」
くつくつと笑う豹牙先輩が俺の頬をそっと撫でる。その手つきがあまりにも危なっかしくて思わず支えると、次の瞬間、豹牙先輩の顔が歪んだ。
「ひょうがせんぱ、」
「とりあえず今日は帰る」
俺の声を遮って、立ち上がった豹牙先輩にぐしゃりと一度、撫でられる。
見上げた先にはいつものように凛々しい表情をした豹牙先輩がいたけれど、なんだか少し無理をしているようなその顔に、俺はなにも言えなかった。
ぽつり。豹牙先輩が帰ったあと、一人ソファーに座りながら膝を抱える。
巴さんの代の喧嘩で、司さんにも関わりがあって、豹牙先輩の問題。
……考えたくはないし、外れていることを願うが、もしかすると今回のその問題とやらには麻薬が関わっているんじゃないだろうか。
豹牙先輩と司さんのお母さんを刺したというのは麻薬で正気を失った誰かだったはずだし、誰かの代わりに刑務所に入っていた巴さんの被ったそれもまた麻薬が関わっていたはずだ。
「……玲央」
もしもこの考えが当たっていたのなら、とばっちりを食っていると言う玲央にも麻薬絡みの問題が起きているということだ。
いや、あまりにも早計すぎるし、なによりこれは俺の想像に過ぎない――けれど。
「……早く、帰って来いよ、馬鹿レオ……」
膨張しつづける不安を押しつぶすように、俺は体を丸めて目を瞑った。
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