いやいや、なぜって答えは決まっている。
「玲央に、なにかあったんですか?」
「あー……いや。まだねぇよ?」
まだ。ということはこの先なにかが起こると言うことか?
不安を隠さずじっと見つめる俺の視線に堪えきれなくなったのか、豹牙先輩が息をついてこちらに視線を戻す。
「……全部は言えない、それでも聞くか?」
「はい、お願いします」
投げかけられた質問に即答すると、その早さに豹牙先輩が苦笑を浮かべる。
「まー、なんだ。はっきり言えるのは今回は俺らの代の喧嘩じゃないってことだ」
「? 巴さん、ですか?」
「まぁ、巴もそうだけど……司も、かな」
「司さんも?」
「そんで俺の問題でもある」
巴さんと司さんと豹牙先輩の問題?
ならばどうして玲央に関係して、豹牙先輩が俺の送り迎えを?
頭の上に次々浮かぶクエスチョンマークをまるで目視したかのように、豹牙先輩がくすくすと笑った。
「なんつーか、今回の玲央はとばっちりを食ってるだけだよ。でもそのとばっちりの度が越えてる。だから今、俺はこうして小虎を守りに来たってわけだ」
「……とばっちり」
「安心しろ、小虎のことは俺が守るから、な?」
優しく頭を撫でる豹牙先輩を見上げながら、俺は噛み砕けずにいる言葉を飲み込んで頷いた。
それから家まで送ってもらい、玄関で別れたところで玲央からメールがきた。
内容はとてもそっけなく「今日から当分帰れない」とのこと。……別に寂しくねーし。
なんて見栄をはったところで部屋の広さを味わった瞬間、唐突に心細さを覚えて玲央の部屋で寝たのは秘密である。ちなみに心苦しくて床で寝たので翌日、俺の体は変な悲鳴を上げていた。
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