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「なんか勘違いしてるみてーだけど、いくら俺が節操なくとも顔が売れてる女は抱かねぇよ」

「え? そうなの?」


思わず凝視してしまう。
来るもの拒まず精神であろう玲央にも抱かない相手がいるだなんて。
でもまぁ確かに相手は新星の歌姫さんだし、さすがに手を出すにも出せないのか?


「悪目立ちしたくはねぇからな」

「え? ……十分してるとおも、あ、なんでもないです、ないから止めて、そんな目で見るのは止めてください」


ギロリと睨む玲央に謝ると、思いっきり首を噛まれる。


「もっ、噛むなっ、いてーよ」

「隙だらけのお前が悪い」

「はぁ? 玲央が物好きなだけだろ。ふつーこういうのは女の子にやるもんだろ?」

「それが普通かどうかは知らねぇけど、お前は俺が他の奴に噛みついてもいいわけだ?」

「は? そりゃ……それ、は、もちろん……」


いや、だってそうだろ。
好きな子の綺麗な首筋とかにドキッとして、噛むまではいかずとも舐めたいとか思うもん、なんだろ?
だったら他の奴に噛みつくのが当然なわけで……。当然なわけで?


「他は知らねぇ。俺が口をつけてもいいと思うのはお前だけだ。お前以外の奴を舐めるとかぜってー無理」

「……」

「照れんな、馬鹿トラ」

「てっ! 照れてねーしっ!」


そりゃまぁ、確かに玲央には変な潔癖があるわけで。
噛むイコール口をつけるというわけで。
ただでさえ外食もあまり好まず、キスもしないという玲央が誰かに噛みつくというのは希少なわけで。
んでその相手が俺ってだけで。いやだから、それがおかしいわけで。


「……わっ、分からん……っ」

「……はぁー……」


頭を抱える俺にため息をついた玲央が、未だかじっていたスプーンを奪い取り、もう一度自分の口に運ぶとその甘さに顔をしかめた。




 


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